「JKKハウジング大学校シンポジウム」を開催

―「情報化社会の加速度的進展と住環境の明日」をテーマに―

2016年11月28日
株式会社住環境研究所

積水化学工業株式会社 住宅カンパニー(プレジデント:関口俊一)の調査研究機関である株式会社住環境研究所(所長:倉片恒治、千代田区神田須田町1-1)は、1975年設立以来40年余り、生活者の視点をベースとした住宅と住環境に関する調査と研究を主業とし、それら調査に基づいた情報を発信して参りました。また、1995年には大学の研究者を講師に招き、住環境を様々な視点から捉える講義を通じ若手社員を教育するという目的で「JKKハウジング大学校」を開設し今年で22年目を迎えました。昨年に引き続き、11月25日(金)に『JKKハウジング大学校シンポジウム』を開催しましたのでお知らせします。
今回のテーマは「~どうなる?どうする?これからの住まい・建築・暮らし~ 情報化社会の加速度的進展と住環境の明日」。池田靖史 慶應義塾大学大学院教授(政策・メディア研究科、環境情報学部教授)による基調講演「建築のデジタル化から情報社会文明論まで」をはじめ、池田教授とハウジング大学校講師によるパネルディスカッションも行いました。会場には約100人が出席しました。

「JKKハウジング大学校シンポジウム」概要

開催日時:11月25日(金) 13:00~17:20
開催場所:学士会館 210号室 (東京都千代田区神田錦町3‐28)
基調講演 テーマ:「建築のデジタル化から情報社会文明論まで」
     講演者:池田靖史    慶應義塾大学大学院教授
パネルディスカッション
   パネリスト:池田靖史 慶應義塾大学大学院教授
         菊池成朋 九州大学大学院教授
         鈴木 毅 近畿大学教授
         伊藤裕久 東京理科大学教授
         大原一興 横浜国立大学大学院教授
         大月敏雄 東京大学大学院教授
         清家 剛 東京大学大学院准教授

 


■基調講演「建築のデジタル化から情報社会文化論まで」

【池田靖史 慶應義塾大学大学院教授のプロフィール】

建築家として国内外で様々な建築や都市のデザインに関わる一方で、BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)や人工知能、ネットワークなどのデジタルな情報技術が建築のデザインから生産・構法・利用にいたるまでに与える影響についての幅広い研究や論考などで知られる。単なる物質的デザインではなく、社会環境の中で柔軟性や拡張性を持つシステムを構成する方法に取り組んでいる。

【講演要旨】

社会の情報化が加速している。住宅内の家庭電化製品には既に何らかのコンピューターが内蔵され、スマートハウスの技術でそれらを相互接続しようとしている。慶應義塾大学の実験ハウスでは、住人の使用状況を徐々に学習して最適な省エネ方法 を推薦したり、住人に健康な生活のための助言をする人工知能のような環境装置を 模索してる。モノがインターネットに繋がりセンシングされたデータが活用され、環境が「知恵」を持ち人間と共生を始めているのだ。電化製品だけでなく建築生産技術 においても、デジタルなデザインによる非規格化部品製造技術の開拓によって多様 なバリエーションの建設や、複雑な構成、高速な施工などの新しい価値が、コンピューターと人間の協働により産み出されている。それはもっと大きな社会的変化の一端と捉えるべきだ。こうした環境の人工知能 化によって、物理的実体としての建築の存在価値が揺らぎ、社会的な活動としての建築行為すら考え直さなくてはならないかもしれないからだ。過去に人類が経験したことの無い変化の速度で進行しており、問題となるのは社会に起きることの内容よりも、その速度への人類の倫理や社会の適応の仕方だ。建築分野でいえば、五感で感じられる空間の体験すらもVR技術の進歩によって映像体験が現実と区別がつかなくなれば、現実には存在しない空間体験だけでなく、現実の一部を改変した体験を合成でき、虚実の境界を不明確にしてしまうため、体験の記憶と理解に基づく人格と社会の形成という前提や、社会的責任の根拠そのものが危うくなってしまう。建築という「実」と情報という「虚」が一体的に融合してしまう時代の中、建築が何であるのかは、これからますます困難な問題となり、本格的な社会文明論にならざるを得なくなるのではないか。

 
JKKハウジング大学校シンポジウム(池田先生講演時)風景