【コラム】子育て世帯が大いに悩む子どもの睡眠事情
―「子どもと睡眠」をテーマに実態を調査―
株式会社住環境研究所
株式会社住環境研究所では、人々のライフスタイルが大きく変化する状況を受け、生活者の暮らしに関する意識の変化を敏感にとらえ、活力ある上質な住まいと住環境について研究と情報発信を行っています。
さて、2021年6月に育児・介護休業法が改正され、22年10月には男性の育児休業の取得を促進するための制度「産後パパ育休(出生時育児休業)」が始まっています。その制度を利用して本格的に育児に携わる男性も増えてきました。2児目の出産で育児休業を取得したある男性は、その間の育児経験で最も驚いたことに“子どもの寝かしつけ”があったと振り返っていました。曰く「寝かしつけは時間と根気が要る行為。妻がそれを毎日行っていたという事実に気付き、改めて妻への尊敬と感謝の念を抱いた次第です」。この男性の発言には、多くの子育て世帯が子どもの睡眠に対して何らかの困りごと、ストレスを感じていることが表れているように思われます。
そこで、今回は「子どもと睡眠」をテーマに実態調査を実施しました。全国(沖縄を除く)の20~30代、既婚、住宅取得者(6年以内)で、子ども(末子年齢0~10才)がいる698人を回答者とするものです。
子どもの年齢から見えてくる睡眠の困りごと
子どもの年齢からくる睡眠の困りごとは、0-5歳(未就学児)で「夜中に目を覚ます」「寝付かない」、「寝る時間が日によってまちまち」が上位です。6-10歳(就学児)では、「朝起きられない」「親と一緒に遅くまで起きている」「朝、目がさえるまで時間がかかる」など、寝覚めに関することでポイントが高くなっていました。
また【グラフ1】をご覧ください。特に手がかかる0~5歳(未就学児)がいる世帯では、「子どもが寝ないと家事や自分の時間が取れない」、「自分が寝不足となり仕事や家事に影響する」など、育児による家事や仕事への影響を気にしていることが分かります。一方、少し手がかからなくなる6~10歳(未就学児)が末子となる世帯では、「子どもの生活時間の乱れ」、「子どもの成長の遅れ」、「勉強の意欲低下」など、子どもの成長や勉強に関することを気にしている様子がうかがえます。
なお、働き方別で見ると、共働き世帯では、「朝の忙しい時に時間を有効に使えない」、「保育園、幼稚園、学校に遅刻」など、朝の生活に関することを挙げる方が多く、片働き世帯では、「寝不足が家事に影響する」ことが困りごと理由のトップとなっていました。(グラフ略)
快適な睡眠のために気を付けていることとは?
では、このような困りごとを解決するためにどのような工夫をしているのでしょうか。
子どもの睡眠を良くするために寝室で工夫していることは、「静かにする」、「照明を睡眠時間に合わせて暗めに設定」、「室内を暖かく・涼しくする」など、入眠時の音、光、温度に気を配っていることが分かりました。子どもの年齢別では、0~5才児がいる世帯で総じてポイントが高いものの、実施内容に大きな違いはないことも判明しました【グラフ2】。
生活面で工夫していることは、「決まった時間に寝かせる」、「早く寝かせる」、「寝る行動を促す」の順となりました。子どもの年齢別に見ると、0~5才児では「たくさん遊ばせる」、「生活リズムを子どもに合わせ親も決まった時間に寝る」世帯が多く、6~10才児では「寝る行動を促す」、「朝決まった時間に起こす」といった生活リズムを整える働きかけをしていることがうかがえました。
※グラフ1、2はともに複数回答です
研究員のコメント
今回は子どもの睡眠に着目しましたが、親の睡眠も夫婦のみの世帯と比べて子供がいる世帯ほど睡眠満足度が低いことが分かっています。睡眠を良くするためには、入眠時や睡眠中、また朝の目覚めに合わせて、寝室だけでなく、住まい全体の温度や湿度、照明設備を適切に制御することは非常に重要です。間取りの工夫や全館空調の導入などで、子どもだけでなく家族全員の睡眠の改善が図れると思われます。