断水の“経験有無”や“経験期間”で備えの内容に差、ほとんどの家庭で 「水の備蓄量が不足」
―災害頻発化で重要性が増す「断水への備え」の実態調査―
株式会社住環境研究所
積水化学工業株式会社 住宅カンパニー(プレジデント:吉田匡秀)の調査研究機関である株式会社住環境研究所(東京都千代田区、所長:太田真人)は、このほど「断水への備え」に対する実態調査を実施し、結果をまとめましたのでお知らせいたします。
今年の元日に発生した能登半島地震では、住宅などの建物被害に加え、多くの方々が長期間にわたり水道水を利用できず不自由な生活を余儀なくされました。これまでの大規模災害においても期間や状況は異なるものの同様の事態が発生しており、今後の災害においても懸念されます。また、近年は集中豪雨の頻発や無降水日の増加に加え、水道施設の老朽化も断水を引き起こす要因となっており、断水への備えはますます重要になっています。
本調査では、家庭における「断水への備え」の実態について、アンケート調査を実施しました。その結果、断水の“経験有無”や“経験期間”で備えの内容に差があり、「生活水」の確保にも課題があることが分かりました。
調査結果のポイント
1.断水期間が長引くほど増す苦労
・断水経験者に聞いたところ、「断水期間が長引くほど」苦労を感じた人が増加
・断水期間が短くても「トイレに困った」と回答した人が多く5割超。次いで飲料水、入浴の順
2.断水の“経験有無”や“経験期間”で備えの内容に差
・飲料水は、断水経験の有無に関わらず、備蓄している人が多数
・断水経験3日以内では、約半数が「水を使わずに済む日用品」を備える
・断水4~7日の経験者は、半数超が「生活水として風呂水・水道水」を備蓄
・給水支援を受けるための「バケツやポリタンク」は、長期間の断水経験者ほど備える傾向
3.ほとんどの家庭で 「水の備蓄量が不足」
・飲料水の備蓄量は、1日分以下が6割と多数。3日分を備蓄できている家庭は2割弱にとどまる
・生活水を含めると、殆どの家庭が1日分以下。3日分を備蓄できている家庭は3%未満とわずか
・水の備蓄に関する困り事は、「保管するスペースがない」といった住宅設計に因ることや、「必要な備蓄量がわからない」「重くて運びきれない」など量に関する内容
■調査概要
断水への備えに対する実態調査
- 調査エリア
- 沖縄県を除く全国
- 調査方法
- インターネットアンケート調査
- 調査次期
- 2024年9月6日~2024年9月10日
- 年齢・性別
- 20~69歳、男女、水道水を使用する世帯
- サンプル数
- 1,500
- 調査目的
- 断水への備え・不安・困り事の実態を断水経験別に把握し、ニーズ・課題を明らかにする
■調査結果
1.断水期間が長引くほど増す苦労
断水経験者に、断水の際に「苦労したこと」を聞いたところ、断水期間が長引くほど苦労が多くなり、飲料水は4日、入浴は6日を超えると苦労を感じた人が5割を超えました。また、トイレは断水期間が短くても苦労が多かったと回答しました。
2.断水の“経験有無”や“経験期間”で備えの内容に差
飲料水は、断水経験が無い家庭でもペットボトルなどにより5割以上で備蓄しており、断水経験の有無に関わらず備蓄している人が多いことがわかりました。また、3日以内の断水を経験した家庭では、ウェットティッシュ・紙皿など「水を使わずに済む日用品」の備蓄が多く約5割。断水経験4~7日では「生活水として風呂水・水道水」を備蓄する家庭が多く5割超。断水経験7日超では「バケツやポリタンクなど水の運搬容器」を備える傾向が高く、給水支援を受けることを想定している様子がうかがえます。
3.ほとんどの家庭で 「水の備蓄量が不足」
水を備蓄している家庭は全体の71.5%、備蓄している「水量」まで把握している家庭は52.6%でした。避難生活で1人1日あたりに必要な飲料水を3リットル※、生活水(トイレ、調理、入浴、洗面、洗濯など)を20リットル※として実際の備蓄量(1人あたり換算)を分類すると、飲料水は「3リットル(1日分)以下」が61.3%を占め、「9リットル(3日分)以上」は18.6%にとどまりました。また、飲料水と生活水の合計では「23リットル(1日分)以下」が95.2%を占め、「69リットル(3日分)以上」は2.7%とわずかでした。備蓄しているつもりでも、実際は長期間の断水に対応できる水量が不足している家庭がほとんどで、とくに生活水の確保に課題があることが明らかになりました。
水の備蓄に関する困り事は「保管するスペースがない」39%、「必要な備蓄量がわからない」34%、「重くて運びきれない」33%の順となっていました。このうち「必要な備蓄量がわからない」は、6~7日間の断水経験者が最も多く、これは断水生活の経験に裏打ちされたものと考えます。
※出典:建築設備工学研究所報No.47「過去から現在、そして未来に続く給排水設備研究への期待」(関東学院大学教授 大塚雅之2024.3)
■調査結果に関する見解
生活水の備蓄にはイノベーションが必要
東南海トラフ地震や首都圏直下型地震の発生に加え、地球温暖化による豪雨災害の頻発とその被害拡大が懸念されています。災害大国である日本に住む以上、どこにいても災害への備えは不可欠です。
今回の実態調査の結果、生活水も含めると断水3日分の備えができている家庭は3%未満という状況が明らかになりました。その理由に「保管するスペースがない」「必要な備蓄量がわからない」「重くて運びきれない」という声がありましたが、多くの家庭において、長期間の生活水を日頃から備蓄しておくことは難しいと考えられます。また、断水経験がない家庭では、断水時の生活を想像しにくく、備蓄量や内容を考える困難性もうかがえました。
一方、自然冷媒ヒートポンプ給湯機(通称:エコキュート)の貯湯タンクの水は断水時に非常用水として活用できますが、その取り出し方を把握している家庭は約3割でした。非常時に備えて、取り出し方を把握しておくことも大切です。
いずれにしても、断水に備えて十分な量の生活水を備蓄するには、住宅設備や設計の工夫による対策などの新たなイノベーションが求められている状況だと考えます。
太田 真人
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株式会社住環境研究所
担当:蛇石(へびいし)
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