【コラムVol.2】 減るバルコニー・消える和室、間取りの新トレンド

―間取り実態調査―

2025年02月14日
株式会社住環境研究所

住環境研究所では、セキスイハイムの間取り図面を約20万件保有(2025年1月時点)し、データベース化しています。
そのデータを活用し、2018年度から2022年度に着工したボリュームゾーンの住宅(2階建て・単世帯)について、間取りの変化や現状を調査しました。その結果、和室やバルコニーといった従来の要素が減少する一方、効率的で実用的な空間が求められる傾向が見られました。今回は、その具体的な変化をご紹介します。

 

バルコニーに干さない若者 “バルコニーなし”を選ぶ時代

2018年度から2022年度にかけて、バルコニーを採用しない住宅の割合は10.8%から30.6%に増加しています(グラフ①)。特に若年層でこの傾向が顕著で、30歳未満の37.9%が「バルコニーなし」を選択しています(グラフ②)。
一方、バルコニーの代わりに「ランドリールーム」や「洗面・脱衣室に物干しスペース」を設ける傾向で、2022年にはバルコニー不採用邸の68.3%がこのスタイルでした。また、別調査(参考グラフ)では、バルコニーを設置している30歳未満のうち、「バルコニーに洗濯物を干す」と回答した人は47.5%にとどまり、若年層ほどバルコニーがあっても洗濯物を干さない傾向が見られました。
共働き世帯の増加に伴い、夜間洗濯や乾燥機の利用が一般的になりつつあります。ランドリールームを活用することで、効率的な家事動線を確保する設計が注目されています。

室内干しの様子
①バルコニー採用率推移(SA)②施主年齢別の採用率(SA)

※バルコニーにはベランダを含みます

 

和室は不要? それでも残る”畳コーナー”の役割

同じく2018年度から2022年度にかけて、和室・畳コーナー「いずれもなし」の住宅が28.0%から49.7%まで上昇しました(グラフ③)。
同時期に住宅の規模はコンパクト化していますが、畳スペースを設けない住宅は、規模に関わらず増加しています。
一方、従来の「和室」が減少していますが、リビング内に設けられる小規模な「畳コーナー」は一定数維持されており、年代別に見ると若年層ほど「畳コーナー」の採用率が高まっています(グラフ④)。これは、幼児の遊び場やくつろぎのスペースとして畳需要が一定数あるためと考えられます。
別調査では、畳は「便利なイメージ」「あった方がよい」と考える若年層が半数近くを占める結果が出ています。コストやスペースの制約から、多目的に使える畳コーナーが支持されているようです。限られた空間を効率的に活用する傾向が強まっていると考えられます。

③和室・畳コーナーの採用率推移(MA)、④施主年齢別の採用率(MA)

 


研究員のコメント

バルコニーを採用しない住宅が増えている背景には、共働き家庭の増加に伴い、夜間洗濯や乾燥機の利用が増えたことが挙げられ、ランドリールームを活用した効率的な家事動線の設計が注目されています。
また、若年層で「畳コーナー」のニーズが一定数あるのは、幼児のいる家庭が安全に遊べる場所として利用する目的があります。この需要は必ずしも固定された畳スペースを必要とせず、更に簡略化した置き畳などで⼗分に代⽤可能です。実用性を重視する若年層にとって、より柔軟で効率的な選択肢といえるでしょう。
このような効率的でフレキシブルな間取りは、今後更に広がると考えられます。

③和室・畳コーナーの採用率推移(MA)、④施主年齢別の採用率(MA)