もう一度建てるなら、どんな住まいがいい? 「実現したい暮らしニーズ」調査

―もう一度建てるなら「3階建て」を望む世帯が増加 。「水害へ備える」ニーズ増加も一因に。―

2017年11月29日
株式会社住環境研究所

積水化学工業株式会社 住宅カンパニー(プレジデント:関口俊一)の調査研究機関である株式会社住環境研究所(所長:小池裕人、千代田区神田須田町1-1)は、このほど「実現したい暮らしニーズ(もう一度建てるとしたらどんな住まいがいいのか)」調査を実施しました。住まいの潜在ニーズ、特に2階建てと3階建てが混在する市場において、理想の住まいがどのようなものなのかを探ることを目的としたものです。
近年の住宅建設は、敷地面積300㎡以上の大規模敷地では減少し、100~150㎡未満など2階建て、あるいは3階建てのどちらにするかを迷う規模の敷地で行われることが増えています。
そこで、敷地面積80㎡以上180㎡未満を2階建てと3階建てが混在する市場とし、その混在市場で建築した世帯を対象に、「もう一度建てるとしたらどんな住まい、暮らしを実現したいか」という視点で調査しました。

調査結果のポイント

1.もう一度建てるなら「3階建て」を望む世帯が増加

①混在市場では2階建て居住者の「3階建て」願望が増加、「再度2階建て」願望は減少
②3階建て願望は敷地の広さ、年齢、地域に関係なく拡大

2.3階建ての良さは「プライバシー確保」「収納量」「外構計画」「眺望の良さ」

①2階建てより3階建て居住者の住まいへの満足度が高い
②特に「プライバシー確保」「収納量」「外構計画」「眺望の良さ」で大きな差

3.「水害へ備えた暮らし」ニーズも3階建て願望増加の要因

①浸水被害に備えた3階建て願望が増加
②「主要な生活空間を2階以上に配置し、自宅で避難生活」に高い願望

4.3階建ての満足度向上はエレベータがカギ

①3階建て居住への不安は「建築費用」「上下階移動・高齢期の生活」
②エレベータ採用層の88.6%が「採用して良かった」と回答

 


■調査概要

調査目的
2階・3階建て住宅混在市場の住まいニーズを探る
調査対象
2005~2017年に2階・3階建てを2階・3階建て住宅混在市場※1に建築した
 20~69才の単身者を除く単世帯家族
調査エリア
全国(北海道・沖縄を除く)
調査方法
Webアンケート調査
調査時期
2017年8月
有効回答
1,200件(2階建て建築者:1,000件 3階建て建築者200件)

※1 2階・3階建て住宅混在市場は、敷地面積80~180㎡未満、建築地周辺に3階建てがある、または3階建て建築可能な土地であることを条件とした

 

■調査結果の概要

1.混在市場の2階建て居住者は、もう一度建てるなら「3階建て」を望む世帯が増加

①混在市場では2階建て居住者の「3階建て」願望が増加、「再度2階建て」願望は減少

2階建て建築者も建設計画時に15.2%が3階建てを検討していました。そこで、「もう一度建てるなら」と質問すると、「3階建てにしたい」が29.2%と約3割にまで増加していました。一方で、「2階建て」は検討時の81.8%から、願望は73.1%にまで減少していました。3階建て居住者も3階建て願望は70.2%(検討時66.1%)にまで増加、2階建ては20.2%(同29.8%)に減少していました。

図1 検討階数の「実績」と「願望」
※表記について  「実績あり」:建築計画時に検討した階数
「願望あり」:もう一度建てるとしたら、検討したい階数

②3階建て願望は敷地の広さ、年齢、地域に関係なく拡大

2階建て建築者のうち、もう一度建てるなら「3階建てを検討」する割合を居住地別に見ると、東海32.3%(3階建て建築者:実績あり15.8%)、首都圏31.9%(同21.8%)、近畿圏22.1%(同20.1%)、その他地域29.3%(同8.0%)でした。近畿圏よりその他地域のほうが高いことから、3階建ては大都市圏だけでなく、全国的にニーズが高まっていることが分かります。
敷地面積別では、80㎡~100㎡未満が28.8%(同20.1%)、100㎡~140㎡未満が31.3%(同17.4%)、140㎡以上が27.3%(同10.5%)となっています。100㎡~140㎡未満が若干高いものの、土地の広さに関係なく3階建てを希望しています。
世帯主年齢別では、3階建て願望は40才以上50歳未満と50才以上60歳未満が30.3%(同40才以上50歳未満13.1%、50才以上60歳未満18.1%)で、40歳未満と60才以上は27.1%(同40歳未満16.0%、60才以上15.6%)となり、年齢による大きな差も見られませんでした。

図2 属性別、3階建て検討の「実績」と「願望」 ※2階建て建築者で集計

就業形態では、共働き世帯(夫婦どちらかがパート)が34.1%(3階建て建築者:実績あり13.6%)で最も高く、次いでその他30.5%(同17.5%)、共働き世帯(夫婦とも正社員)28.3%(同19.1%)、専業主婦世帯25.4%(同13.2%)となっていました。これにより、共働き世帯の方が専業主婦世帯より3階建て願望が強いことが分かります。

2.3階建ての良さは「プライバシー確保」「収納量」「外構計画」「眺望の良さ」

①2階建てより3階建て居住者の住まいへの満足度が高い

2階建て建築者と3階建て建築者の入居後満足度(+15~-15点の7段階の加重平均値)を比較すると、総合満足度は3階建て居住者7.4に対し、2階建て居住者は7.0で3階建て居住者の満足度が高くなっています。

②特に「プライバシー確保」「収納量」「外構計画」「眺望の良さ」で大きな差

満足度の差が大きいのは、「プライバシー確保」が2階建て居住者4.5に対し3階建て居住者5.7、「収納スペース」は3.9に対し5.0、「外まわりの計画」は3.9に対し5.5、「住まいからの眺め」3.7に対し5.2となっています。

図3 入居後満足度 ※加重平均値:7段階(+15~-15点)

3.「水害へ備えた暮らし」ニーズも3階建て願望増加の要因

①浸水被害に備えた3階建て願望が増加

3階建て願望(2階建て建築者)を実現したい暮らし別に見ると、1位が「水害に備えた暮らし」(50.1%)で、次いで「エレベーターのある暮らし」(47.2%)、「大型バルコニーのある暮らし」(43.3%)と続きます。住ニーズは社会・経済動向を敏感に反映するといわれていますが、今回の「実現したい暮らしニーズ」調査でもそのことがはっきりと浮き彫りにされたのが「水害への備え」ニーズです。最近、集中豪雨による洪水、河川の氾濫による、甚大な被害が発生していますが、そうした水害被害の増加が「水害の備え」ニーズ、引いては3階建て願望の高まりに反映されているといえます。

図4 実現したい暮らし別、3階建て検討願望
 ※2階建て建築者で集計

②「主要な生活空間を2階以上に配置し、自宅で避難生活」に高い願望

また、「3階建てで実現したい水害の備え」として、主要な生活空間を2階以上に配置し、「水害が起きても自宅で避難生活が送れる暮らし」(46.9%)、「家財や貴重品を水害から守る暮らし」(32.0%)、「水害が起きても太陽光等で電気が使える暮らし」(26.4%)、「いざという時は屋上に避難できる暮らし」(15.4%)などがあがっていました。

図5 3階建てで実現したい水害への備え
 ※2階建て建築者のうち、水害に備えた暮らしを3階建てで実現したいと回答した人(n=52)で集計

4.3階建ての満足度向上はエレベータがカギ

①3階建て居住への不安は「建築費用」「上下階移動・高齢期の生活」

2階建て居住者に「3階建て住宅で不安に思うこと」を複数回答で聞いたところ、「建築費用」(71.1%)、「上下階の移動・高齢期の生活」(65.0%)が、50%を超えるツートップとなりました。

図6 3階建て住宅で不安なこと(複数回答)
   ※2階建て建築者のうち、3階建てを検討したいと回答した人(n=292)で集計

②エレベータ採用層の88.6%が「採用して良かった」と回答

昨年度調査より、3階建ての困りごと「上下移動・高齢期不安」は、エレベータの採用で概ね解消されており、またエレベータ採用層の88.6%が「採用して良かったと回答」しており、3階建ての満足度向上はエレベータの採用とその使い勝手の良さがあげられます。

図7 3階建てで困ったことあきらめたこと
※2016年住環境研究所調査
図8 採用してよかった仕様・設備
※2016年住環境研究所調査
 算出方法:採用してよかった÷採用