大規模HEMSデータと住空間構成の統合分析を開始

―東京大学生産技術研究所ESI社会連携研究部門の協力のもと、データ活用を推進―

株式会社住環境研究所/2026年06月24日

積水化学工業株式会社 住宅カンパニー(プレジデント:吉田匡秀、以下「積水化学」)の調査研究機関である株式会社住環境研究所(所長:太田真人、千代田区内神田1-14-10)は、約10万件・最大14年にわたるHEMS(Home Energy Management System)データと、当社が保有する住宅間取りデータを組み合わせた統合分析※1を開始します。

左から、東京大学 岩船由美子教授  積水化学工業(株)住宅カンパニー/住環境研究所 太田真人所長  東京大学 大岡龍三教授

近年、国際情勢などを背景とした電気・ガス料金や物価の上昇により、家庭部門におけるエネルギー負担の増大が顕在化しています。また、断熱性など住宅性能の違いが、エネルギー消費量や居住者の快適性に大きく影響することへの認識も高まっています。こうした状況を受け、実際の生活におけるエネルギー利用実態を把握し、住宅性能や暮らし方との関係を明らかにすることの重要性が高まっています。
HEMSデータの活用研究は、積水化学が東京大学生産技術研究所エネルギーシステムインテグレーション社会連携研究部門(以下「東大生研ESI」)と2018年から共同で推進してきたものであり、暮らし方の変化が電力使用データとして定量的に把握できることが確認されています。
今回、住環境研究所は、その成果を基盤として新たな分析に取り組みます。従来のHEMSデータ分析で把握してきたエネルギー利用の実態に加え、「住空間」「暮らし方」「エネルギー利用」の関係性を横断的に捉え、暮らしが住宅やエネルギーに与える影響の解明を進めます。
当社では引き続き、暮らしにフォーカスした調査・研究を行うことにより、社会課題の解決に貢献してまいります。

HEMSデータを活用した研究の概要

1.約10万件・最大14年にわたる住宅HEMSデータの蓄積で研究基盤を構築

2.HEMSデータ分析により暮らし変化を可視化  ~コロナ前後の変化~

3.これまでの研究成果を基盤に、より多角的なHEMSデータ解析を推進

■背景

日本はエネルギー自給率が16.3%(2024年時点)※2と低く、原油の約9割超を中東に依存している(2025年時点)※3ことから、国際情勢や物価上昇の影響を受けやすい構造にあります。近年は電気・ガス料金や物価上昇も重なり、家庭部門におけるエネルギー負担の増大が顕在化しています。また、2050年カーボンニュートラル社会の実現に向け、政府はGX(グリーントランスフォーメーション)を推進し、再生可能エネルギーの導入拡大(2040年に電源構成の4~5割を目標)など、エネルギー需給構造の転換が急務となっています。しかし、再生可能エネルギーは天候等による発電量の変動が大きく、電力需給の安定化に向けては利用側も含めたエネルギーマネジメントの高度化が求められています。
住宅分野においては、省エネルギー性能の向上が重要な政策課題と位置付けられており、2025年には新築住宅への省エネ基準適合が義務化、2030年に向けてはZEH水準の標準化が進められています。近年は、GXの実現に向け、断熱性能向上や太陽光発電・HEMS等を組み合わせたGX ZEHへの対応など、更なる住宅の高性能化が求められています。
以上の背景から、実際の生活におけるエネルギー利用実態を把握し、住宅性能や暮らし方との関係を明らかにすることの重要性が高まっています。

■HEMSデータを活用した研究について

1.約10万件・最大14年にわたる住宅HEMSデータの蓄積で研究基盤を構築

HEMSは、家庭内のエネルギー使用状況をリアルタイムで把握・記録するシステムであり、電力消費の詳細なデータを継続的に取得できます。こうしたHEMSデータの活用研究は、2011年に積水化学と東京大学生産技術研究所 岩船研究室との共同研究として開始され、2018年からは東大生研ESIの枠組みのもと、データ取得当初から共同で継続的に推進してきたものです。
これにより、約10万件・最大14年にわたる実住宅データを蓄積し、エネルギー利用実態を長期かつ大規模に把握できる、国内でも希少な研究基盤を構築しています。

2.HEMSデータ分析により暮らし変化を可視化 ~コロナ前後の変化~

これまでのHEMSデータ分析により、暮らし方の変化が用途別の電力利用から具体的に捉えられることが明らかとなっています。

■テレワーク定着と家事・余暇行動の変容
回路別の年間消費電力量について、コロナ前(2018年・2019年の電力量の平均値)に対する2025年の変化率を比較した結果(グラフ①)、「書斎」(+13.2%)、「電子レンジ」(+12.4%)、「食洗機」(+4.1%)で増加が確認されました。コロナ後のテレワーク定着に加え、電子レンジや食洗機の増加から、効率性や時短ニーズを重視した家事スタイルへのシフトが読み取れます。
一方、「テレビ」(-12.2%)は大きく減少しており、家庭内での情報収集や余暇の過ごし方が変化していることが示唆されます。

【グラフ① 回路別 年間消費電力量と変化率】

〔分析対象〕
沖縄を除く全国、建築2017年以前、11,174件

■30~40代で拡大する食洗機利用
また、食洗機の電力使用量を世帯主年齢別に見ると(グラフ②)、「30代」(+28.0%)「40代」(+15.1%)で大幅な増加傾向が見られました。共働き・子育て世帯が多い30~40代で食洗機の利用拡大が進んでおり、家事負担の軽減を目的とした設備利用が定着しつつあることがうかがえます。

【グラフ② 世帯 主年齢別 食洗機電力量と変化率】

〔分析対象〕
沖縄を除く全国、建築2017年以前、11,174件

3.これまでの研究成果を基盤に、より多角的なHEMSデータ解析を推進

これまでのHEMSデータ分析から、暮らし方の変化は電力使用の変化として客観的・定量的に把握できることが分かってきました。一方で、近年は空間の一体化など間取りのオープン化が進んでおり、住空間がエネルギー消費に与える影響については十分に解明されていません。
今後は、積水化学と東大生研ESIとの共同研究で蓄積されてきたHEMSデータ分析の成果を基盤に、当社が保有する「住宅の間取りデータ」や「入居後の生活に関するデータ」を組み合わせた統合分析※1を推進していきます。

本統合分析を通じて、省エネルギーと快適性の両立、生活者の暮らし方への影響、災害時対応やレジリエンス強化といった多角的な観点から、住宅と暮らし、エネルギー利用の関係性の解明を進めます。
また、電力供給の安定化や電力需給調整(デマンドレスポンス)への活用など、社会全体のエネルギーマネジメントへの貢献も視野に入れ、住宅分野からの新たな価値創出を目指します。

※1 お客様情報の利用目的と共同利用に関するご案内
※2 経済産業省 資源エネルギー庁 令和6年度(2024年度)エネルギー需給実績(確報)(令和8年4月14日公表) 概要
※3 経済産業省資料(中東情勢に関する関係閣僚会議(第1回)資料4)

この件に関するお問い合わせは下記までお願いします
株式会社住環境研究所
〒101-0047 東京都千代田区内神田1-14-10 PMO内神田9階
TEL:03-6275-0450(佐藤[さとう])
HP :https://www.jkk-info.jp

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