株式会社住環境研究所

高断熱化で広がる住空間の選択肢

~間取り・HEMS統合分析から見えた吹抜け住宅のエネルギー消費量の実態~

株式会社住環境研究所/2026年10月07日

株式会社住環境研究所(千代田区内神田1-14-10)は、積水化学工業株式会社と東京大学生産技術研究所エネルギーシステムインテグレーション社会連携研究部門との共同研究で蓄積されてきたHEMSデータ分析の成果を基盤に、「大規模HEMSデータと住空間構成の統合分析」の開始を2026年6月に発表*1しました。今回はその最初の研究成果をご紹介します。

HEMSデータと建築データ・アンケートデータの統合分析

当研究所の間取りの実態調査では、LDK内に吹抜けを設けた「オープンプラン」の採用割合が増加しており、住まいの間取りにおいて、開放的な空間を取り入れる傾向が確認されています。一方、吹抜けなどの開放的な空間は、「冷暖房効率が不利になるのではないか」というイメージから、設計上の制約として捉えられることも少なくありません。また近年、省エネルギー基準の強化などを背景に住宅の高断熱化が進んでいますが、住宅性能の向上によって、開放的な住空間と省エネルギー性を実際にどこまで両立できるのかについては、十分に検証されていません。

そこで本研究では、約4,700棟の実住宅の間取りデータとHEMSの電力データを用い、住宅プラン(吹抜け・階段位置)と断熱性能が年間空調電力量に与える影響を分析しました。さらに、入居後の居住者評価を用いて、住宅プラン・断熱性能別の満足度についても検証しました。

結果の概要

1. LDK内に吹抜けのある「オープンプラン」が増加

2. 高断熱になるほど、住宅プランによる空調電力量の差が縮小

3. 断熱等級6では、オープンプランの満足度が最も高い

※分析対象
本コラムでは、①間取りデータ、②HEMSデータ、③居住者評価の3種類のデータを用いて分析しています。
分析内容によって対象件数が異なるため、各結果に対象条件を示しています。

1.LDK内に吹抜けのある「オープンプラン」が増加

間取りデータ   2019~2024年度に着工した全国のセキスイハイム住宅/2階建て・単世帯住宅/40,202棟

【図1. プラン分類】

オープンプラン、セミオープンプラン、クローズプランの分類

住宅プランを、❶オープンプラン(LDK内吹抜け有)、❷セミオープンプラン(吹抜けはないが、リビング内階段で上下階がつながる)、❸クローズプラン(吹抜けがなく、階段もホールにある)、❹その他プランに分類し(図1参照)、出現率の推移をみました(図2参照)。

2019年から2024年にかけて、❶オープンプランは14%から22%へと約1.6倍に増加しました。一方、❷セミオープンプランは34%から26%へ減少し、❸クローズプランと❹その他プランはおおむね横ばいでした。吹抜けがなくリビング内階段のみでLDKと上下階をつなぐプランが減少する一方、吹抜けによるより開放度の高いプランが増えています。

【図2. プラン出現率の推移】

2019年から2024年の住宅プラン別出現率の推移

2.高断熱になるほど、住宅プランによる空調電力量の差が縮小

HEMSデータ
2019年以降に引き渡した「省エネ地域区分5・6」のセキスイハイム住宅/2階建て・単世帯住宅/延床90㎡以上130㎡未満/全室空調・稼働率65%以上※/4,712棟

断熱等級と住宅プラン別の分析対象棟数

※稼働率=100W以上の電力量が得られている時間÷年間総時間

空調電力量は住宅の規模や地域、空調方式などの影響を受けます。そこでプラン間の違いのみを比較するため、プラン以外の条件をそろえた実住宅4,712棟について、間取りデータで分類した開放度の異なる❶オープンプラン、❷セミオープンプラン、❸クローズプランの3タイプ別(図1参照)に、2025年7月から2026年6月までの年間空調電力量(中央値、以下同じ)を分析し、断熱等級4の❸クローズプランを100とした指数で比較しました(図3参照)。

断熱等級6「オープンプラン」の空調電力量は、断熱等級4「クローズプラン」を下回る

まず、住宅プランにかかわらず、断熱性能が高いほど空調電力量は少ない傾向が確認されました。また、断熱性能と住宅プランを組み合わせてみると、断熱等級6の❶オープンプランの年間空調電力量指数は96となり、基準となる断熱等級4の❸クローズプランを下回りました。このことから、吹抜けのあるオープンプランでも、十分な断熱性能を確保することで、断熱等級4のクローズプランよりも空調電力量を抑えられることが示されました。

断熱性能が高いほど「オープンプラン」と「クローズプラン」の空調電力量の差は縮小

さらに、❶オープンプランと❸クローズプランの空調電力量指数の差は、断熱等級4では12ポイントであったのに対し、断熱等級6では5ポイントとなり、その差は縮小しました。高断熱になるほど、住宅プランによる空調電力量の差が小さくなる傾向が確認されました。

これらの結果から、高断熱化によって空調電力量そのものが抑えられるとともに、吹抜けなどのオープンプランとクローズプランによる空調電力量の差も小さくなる可能性が示されました。

【図3. 年間空調電力量指数(断熱等級4・❸クローズプラン=100)】

断熱等級別・住宅プラン別の年間空調電力量指数

3. 断熱等級6では、オープンプランの満足度が最も高い

居住者評価
HEMSデータに示す条件に該当し、 セキスイハイムが実施する「入居後1年アンケート調査」に回答した3,973件

次に、HEMS分析と同じ住宅条件に該当する入居後1年の居住者アンケート3,973件から、夏冬の過ごしやすさなどに関する「住み心地・性能」の満足度を、住宅プラン・断熱等級別に比較しました(図4参照)。
「大変満足」と回答した割合をみると、断熱等級4・5ではプランによる明確な傾向はみられませんでしたが、断熱等級6では、❶オープンプランで75%、❷セミオープンプランで72%、❸クローズプランで67%となり、断熱等級4・5よりも総じて満足度が高く、中でも最も開放度の高い❶オープンプランが最も高い結果となりました。

【図4. 住み心地・性能満足度】

断熱等級と住宅プラン別の「大変満足」と回答した割合

本調査は断熱性能や吹抜けの有無と満足度との因果関係を直接的に示すものではありませんが、吹抜けのあるプランでも高い「住み心地・性能」満足度が確認された点は注目されます。

研究員のコメント

「省エネ」に加えて、暮らしの選択肢を広げる高断熱住宅へ

高断熱住宅では、吹抜けなどの開放的な住空間も快適に実現しやすいといわれてきました。一方、実際に暮らしている住宅において、断熱性能や住宅プランの違いが空調電力量にどの程度影響するのかは、十分に明らかになっていませんでした。今回、実住宅4,712棟のHEMSデータを分析した結果、断熱性能が高いほど空調電力量が少なくなるだけでなく、オープンプランとクローズプランの空調電力量の差も小さくなる傾向を、実際の暮らしのデータから確認できました。また、断熱等級6では、オープンプランの「住み心地・性能」満足度が最も高い傾向がみられました。これらの結果から、高断熱化は省エネルギーのためだけでなく、空調電力量への不安を抑えながら、吹抜けなどの開放的な住空間を選択しやすくする基盤性能となる可能性があります。

今回は、「大規模HEMSデータと住空間構成の統合分析」の一環として、実住宅のHEMSデータに間取りデータと入居後の居住者評価を組み合わせ、住宅性能・住空間・エネルギー利用・居住者評価を横断して分析しました。住環境研究所では今後も、実際の暮らしから得られるデータを研究基盤として、住宅性能と暮らしの関係を明らかにしていきます。

※1 大規模HEMSデータと住空間構成の統合分析を開始|株式会社住環境研究所
(2026/6/24公表)

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